「こんなに理想の物件が見つかるとは思っていなくて。一目惚れでした」

視界を遮る壁がない1LDKの空間と、自然光がたっぷり入る大きな窓。念願のアイランドキッチンと収納力抜群のパントリー。自身の偏愛品を集めたセレクトショップ「sui.」を営むのりまいさんのおうちづくりは、さほど期待せずに訪れた賃貸の中古マンションとの出会いから始まりました。ネットに詳細情報が出ていなかったリノベーション済みの部屋をひと目見て、心惹かれてしまったのです。賃貸物件は一期一会ですから、運命のタイミングだったのかもしれません。

コロナ禍で自宅時間が増え、暮らしと仕事の両立がしやすい空間を求めて引っ越しを考えるようになったのりまいさん夫婦。お二人と同じ様に暮らしと仕事の場が重なり始め、今のおうちのままでは住みにくくなった人もいるでしょう。

今回は、リノベーション済みのお部屋の魅力に加え、心地よく、自分好みの空間に進化させる工夫をお聞きしました。センスの良さだけに頼らない、ルールに則った空間づくりや収納方法はわかりやすいものばかりです。のりまいさんのキッチンストーリーにとどまらない「LDKストーリー」をご紹介します。
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リノベ済み物件と運命の出会い。決め手はキッチン

のりまいさんが引っ越しを決めたのは、コロナ禍で夫婦ともに自宅で過ごす時間が増えたのがきっかけ。どちらかがオンライン会議中は、もう一方が静かに過ごすなど、少しずつ不便を感じる場面が増え、広い家に住みたい気持ちが大きくなっていきました。加えて、コロナ禍にお互いの実家のワンちゃんに会いに行く機会が減ってしまったのも理由のひとつです。この機会にペットの飼育が可能な物件に引っ越し、自分たちのワンちゃんをお迎えしたいと考えるようになりました。

「エリアの指定とペット可物件という条件以外は、こだわったことはほぼありません。探す段階では築年数もリノベの有無も気にしていませんでした。仕事柄、家で撮影することが多いので、自然光がきれいに入るといいなと思っていたくらいです。ほかには、オーブンやジューサーなどを余裕を持って置けるように、キッチンがある程度広いと嬉しいなとぼんやり思っていました」

そんななか、不動産会社の人に「あまり期待できないけれど…」と言われながら見に行った物件で、のりまいさんは運命の出会いを果たします。最新情報がネットに掲載されておらず、不動産会社も状況を把握しきれていなかったその部屋は、のりまいさんの理想に近い状態にリノベーションがされていました。特に、キッチンは文句のない仕上がりだったと言います。
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「アイランドキッチンとパントリーを見た瞬間、一目惚れでした。無垢材の床や窓の大きさなど他にも気に入った点はありますが、とにかくキッチンが決め手でした。いつか家を建てるとしたらこんな風にしたいと想像していたキッチンだったんです」

当初パートナーは、最新設備付きで外観もきれいな他の物件を希望していましたが、のりまいさんの熱心な説得を受け「そこまで言うのであれば」と折れるかたちとなりました。
その後、念願だったワンちゃんをお迎えし、夫婦ふたりと一匹の新しい暮らしがスタートしました。

LDKをひとまとまりと捉える、死角がない空間づくり

キッチンに加えて、壁が少なく空間が細かくわかれていなかった点も好印象でした。広さは確保されていながら、間取りとしては1LDKにリノベーションされており、どこに居ても死角がありません。
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「LDKが区切りの無いひとつの空間になっているので、友人や家族を招いた際にどこにいてもコミュニケーションが取れて使いやすいんです。空間づくりの工夫としては、視界を遮るような高い家具は置かないようしています。例えばソファは部屋の中で存在感のあるアイテムなので、空間が遮断されないようにロータイプを選びました。おかげでリビングの一角にある自分のワークスペースからも全体が見渡せます」

視界を遮らない点と合わせて、一体感ある空間づくりに寄与しているルールが、ひとつの視界に入る色数を3つにすることです。キッチンならメインカラーは白とシルバー(またはグレー)、アクセントカラーがウォールナットブラウン、リビングダイニングはメインカラーがグレーとアンティークブラウン、アクセントカラーがアイアンブラック(ダークグレー)。このルールに則って家具や雑貨選びをしていくと、素材が揃っていなくともまとまりのある空間が出来上がります。
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入居した時点では、今よりも北欧感が強い設えだったため、自分の好みのテイストとの隙間を埋める調整をしたのりまいさん。

「私はモダンすぎないテイストが好みなので、色のルールを意識しつつ、アンティークの椅子や棚をLDK全体に散りばめたり、ダイニングのペンダントライトを引越し前から愛用していたものに変えたりして、自分が落ち着くバランスに仕上げました」
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他にも、剥がせる壁紙を利用してリビングの壁を一面だけダークグレーに変えたり、家具の脚をアイアン調に黒くペイントして無垢の床との対比で引き締まった印象をつくったりと、細部まで妥協しません。家具だけでなく、雑貨などの小物選びにもこだわりがうかがえます。
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「植物が好きで季節に合わせて生けています。そのときによって惹かれる植物が異なるので、花器は白や黒、透明など色のないものを選んでいますね。赤や黄色など色ものの花器も単体で見ると素敵ですが、どんな色の植物にも合わせやすいかどうかを最優先にしています。花器だけでなく、部屋に置くものを選ぶときに常に意識しているルールですね」

こうした徹底したルールは本や雑誌で勉強して実践しているのではなく、自身の心地よさを突き詰めるうちに自然と出来上がったというから驚きです。

「どこで勉強したのかと聞かれることも多いのですが、実は知識を先に取り入れるのは苦手なんです(笑)。自身の心地よさを突き詰めて自然と実践してきたことをYouTubeなどで対外的に発信するようになってはじめて、言語化するようになったというか。何が心地よいのか、どのバランスが好きなのか、試行錯誤しながら自分で考えるのが好きです」

動きやすさ、コミュニケーション、収納力。文句なしの一目惚れキッチン

「アイランドキッチンは、家族や友人が来た際に私がお茶を淹れたりで動いていても、目を合わせて会話しながら過ごせるので、お互いに気を遣わず、気に入っています」

以前のキッチンは壁沿いのL字型だったので、ダイニングやリビングにお尻を向けるかたちとなってしまい、空間が分断されていました。今使用しているアイランドキッチンは自分が動きやすいだけでなく、作業中もお客さんと会話を続けられるため、全員が居心地良く過ごせているのだそうです。

「もともと憧れていたアイランドキッチンですが、360度どこからでも手を伸ばせて使いやすいというのは、住み始めてから改めて感じています。大人数で立っても窮屈にならず、家族や友人と一緒に作業するシーンも増えました。毎朝のルーティーンであるコーヒーやスムージーの準備も、夫婦で同時進行でき、ストレスがありません」
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物をなるべく見えないように収納したいのりまいさんにとって、大容量収納も欠かせない要素です。今のキッチンでは、「常に外に何も物が出ていない状態」が叶えられました。

「キッチンのシンク側・ダイニング側両方が、収納スペースになっています。さらにパントリーがあるので収納力は抜群です。元々は何もない空間だったパントリーの中は、自分で突っ張り棒や引き出しを組み合わせて収納性と使い勝手を高めました。無駄になっていたパントリー内の高さを活用できるように工夫したことで、オーブンやジューサーなどの家電や調理器具などをすっきりと収納できています」
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余計な物をなるべく外に置かずに収納する一方、厳選したお気に入りのアイテムはキッチンの真向かいに位置する飾り棚に並べています。壁を掘り込んだデザインの飾り棚とそこに並ぶ小物たち、ダイニングの椅子やテーブル、奥に広がるリビングとその一角のワークスペース。キッチンから見渡す景色まるごとが、日々の心地よさをもたらしてくれるのりまいさんのお気に入りです。
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片付けが苦手だからこそのルール。物の住所を決め、元に戻す

常に片付いた状態を保つために徹底しているのが、物の住所を細かく決めること。

「散らかっているのは苦手ですが、実は片付けるのは得意ではないんです。だからこそ、物をしまう場所=住所を決めて、使い終わったら必ず戻します。ざっくりした住所だと結局その中がごちゃっとするので、収納スペース自体を小分けにするのがおすすめです。例えば仕事机の横にある棚は引き出しが浅いものを選んでいますし、パントリーの中は衣装ケースを使って引き出しを多くしました」

持ち物を増やしすぎないのも、片付いた空間づくりの秘訣です。たとえ欲しい物に出会っても、用途と収納場所を想像して納得できなければ購入しません。
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「セール品なら定価だとしても欲しいかを考えますし、欲しいものが売り切れているからといって別の物で妥協することもしません。用途がかぶっている物も買わないですね。ミニマリストではありませんが、本当に好きなものしか持ちたくないので、手に入れる理由を自分なりに100%正当化できない場合は買わないようにしています」

のりまいさんがこう考えるようになったのは、実家での体験が影響しています。両親が結婚当初に手に入れた物を30年近く使っていることに気づき、「とりあえず」でも一度手にしたものは意外と長く使うことになるのだと実感したのです。

「実家では両親が新婚の頃にお祝いでもらったという器や、とりあえず買ったという100均のカトラリーなどが長く使われていました。なかなか壊れるものではなく買い替えのタイミングもないので、初めから意識をして長く愛用したいものだけを買った方が、長い目で見るとお得だなと思ったんです。実家を出たタイミングで、少しずつしか買えないとしても、本当に気に入るものだけを揃える生活にしようと決めました」
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心地よい家づくりについて、たくさんのヒントを教えてくれたのりまいさん。最後に、最も意識すべきは「体験設計」だと話してくれました。

間取り図を上から眺めてテトリスのように家具を配置するのではなく、動線や、座ったとき・立ったときの視界がどうなるかまで具体的に想像してみる。オンライン会議の時に家族が映り込まない配置にするとか、ペットやお子さんを常に視界に入れながら仕事ができるようにするなど、それぞれの事情に合わせた、それぞれの使いやすさがあるはずです。シーンごとに家具の配置をフレキシブルに変えられる、余白のある設計もありかもしれません。

仕事と暮らしの場が重なり、これまでのおうちに少しずつ不便を感じるようになっているのなら、のりまいさんのお話をきかっけに、より今にフィットした住まいの形を考えてみませんか。
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【のりまいさんプロフィール】
自身の偏愛品をあつめたオンラインショップ「sui.(スイ)」の店主。千葉県出身。現在は東京都で夫と愛犬と共に暮らしている。日々の暮らしやお菓子のレシピ、リノベーション賃貸の自宅などをInstagramやYouTubeをはじめとした各SNSで発信。ほどほどに丁寧で合理的、心地いい暮らしと日々向き合っている。ブランドものではなく、背景のあるものづくりがすき。
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